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「採用する気のない求人」によって嵩上げされる「有効求人倍率」と、でっち上げられる「人手不足社会」(コラムニスト 近藤 駿介)

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「採用する気のない求人」によって嵩上げされる「有効求人倍率」と、でっち上げられる「人手不足社会」(金融経済評論家・コラムニスト 近藤 駿介)
今回は合同会社アナザーステージ 代表 近藤 駿介さんのブログ『近藤駿介 In My Opinion』からご寄稿いただきました。
※この記事は2014年06月01日に書かれたものです。
※すべての画像が表示されない場合は、http://getnews.jp/archives/588691をごらんください。
■「採用する気のない求人」によって嵩上げされる「有効求人倍率」と、でっち上げられる「人手不足社会」(コラムニスト 近藤 駿介)
「厚生労働省が30日発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.08倍と前月から0.01ポイント上がった。改善は17カ月連続で2006年7月以来7年9カ月ぶりの高い水準となった。製造業やサービス業を中心に求人が増えている。景気の回復を受け、経営者が雇用に前向きになっている」(30日付日本経済新聞 「雇用7年9か月ぶり高水準」)

日本を代表する経済紙は、何が何でも「人手不足社会」であるという世論を作り上げたいようです。30日付の夕刊では、一面トップで「企業の人手不足強まる」という小見出しまで付けて、有効求人倍率が1.08倍と「7年9か月ぶり高水準」になったことを報じています。

有効求人倍率が「7年9か月ぶり高水準」に達したことは、事実ではありますから、それを報じることが悪いわけではありません。しかし、気に掛かるのは、都合のいい表面的な部分だけを大袈裟に報じ、日本を代表する経済紙として当然すべく中身の分析を全くせず、何のチェック機能も果たさない「政府の広報誌」に成り下がっていることです。

「厚生労働省では、公共職業安定所(ハローワーク)における求人、求職、就職の状況をとりまとめ、求人倍率などの指標を作成し、一般職業紹介状況として毎月公表しています。
平成26年4月の数値をみると、有効求人倍率(季節調整値)は1.08倍となり、前月を0.01ポイント上回りました。新規求人倍率(季節調整値)は1.64倍となり、前月を0.02ポイント下回りました。正社員有効求人倍率は0.61倍となり、前年同月を0.12ポイント上回りました。」

「一般職業紹介状況(平成26年4月分)について」2014年05月30日『厚生労働省』
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000046841.html

厚労省が公表した報道資料の冒頭部分には、このように「有効求人倍率(季節調整値)は1.08倍となり」の直ぐ後に、「正社員有効求人倍率は0.61倍となり」(何故正社員の統計が「季節調整値」ではなく「実数」になっているのかも不思議ですが)と明記されています。しかし、朝日新聞が下記のように報じた以外、この事実を報じたメディアは見当たりません。

「正社員を希望する人でみると、有効求人倍率(原数値)は0.61倍で前月を0.04ポイント下回った。求人は依然、非正規が中心となっている。このため、企業が出した求人のうち、実際に採用に結びついたのは2割にとどまった」(30日朝日新聞DIGITAL「有効求人倍率、バブル後の最高値並み」)

厚生労働省も、「正社員有効求人倍率は0.61倍となり、前年同月を0.12ポイント上回りました」と、如何にも「正社員有効求人倍率」が回復基調にあるという錯覚を与えるような表現をしています。しかし、現実は、朝日新聞が報じているように前月を0.04ポイント下回っているうえ、2月の0.67倍をピークに2か月連続での低下となっています。

さらに、「正社員の有効求人倍率」は、厚生労働省がいう通り、前年同月を0.12ポイント上回っていますが、「正社員の就職件数でみると、2014年4月は83,098件と、2013年4月の84,044件から946件減少しているのです。

反対に、正社員の有効求人数自体は、2013年4月の878,504人から957,751人へと79,247人増加していますから、求人の増加が「有効求人倍率」を引上げた形になっています。

それにより、有効求人に対する就職件数の割合(以下「成約率」)は、2013年4月の9.6%から8.7%と0.9%低下しています。

「採用する気のない求人」によって嵩上げされる「有効求人倍率」と、でっち上げられる「人手不足社会」(金融経済評論家・コラムニスト 近藤 駿介)
(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://getnews.jp/img/archives/2014/06/saiyou.jpg

有効求人10件に対して1人以下しか企業が採用しないという現状からいえることは、実際には「人手不足」ではない可能性が高いということです。

企業が本当に「人手不足」に困っているとしたら、10%にも満たない「成約率」が上昇して然るべきですが、現実には2010年3月の14%をピークに低下傾向を辿っています。「成約率」が10%にも満たない水準で横這いになっているということは、少なくとも企業側の「正社員に対する採用意欲は高くない」ということです。

「成約率」が極めて低い状況に留まっているのは、よく言われる「雇用のミスマッチ」もあることは確かだと思われますが、「採用する気のない求人」がかなり含まれている可能性も否定出来ません。非正規職員を多く抱えるハローワークが、「成果」を求めて「採用する気のない求人」を集めていることは、これまでも指摘されていることです。

実際の「就職件数」と「成約率」が低迷する中、「採用する気のない求人」を掻き集めることで「有効求人倍率」を嵩上げし、それによって「人手不足社会」を必死にアピールする政策当局と日本を代表する経済紙。その根底にあるのは、現実には程遠い「経済の好循環」の演出であることは想像に難くありません。

「研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること」(文部科学省「研究活動の不正行為等の定義」)

文部科学省は、研究不正行為の一つである「改ざん」について、このように定義しています。もし「有効求人倍率」という指標が研究データであったとしたら、「採用する気のない求人」を掻き集めて「有効求人倍率」を嵩上げし、「人手不足社会」という結論をでっち上げるかのような「有効求人倍率」統計は、文部科学省に「改ざん」と認定されても仕方がないように思います。

「有効求人倍率」の中身から見えて来ることは、「経済の好循環」に基づく「人手不足社会」ではなく、これまでの「公共事業=悪」という安直な人気取り政策を採り続けたことで「人材不足」が経済成長のボトルネックになってしまっていることと、企業が安価な労働力をふんだんに使って成長を目指すという「ブラック企業型ビジネスモデル」が崩壊しつつあるということです。

世界の多くの政策当局が、景気回復下での低インフレ・デフレと雇用問題に頭を悩ませるなか、「採用する気のない求人」が増えたことなどに基づいて「デフレからの脱却」と「人手不足社会」をでっち上げ、臆面もなく「Japan is back」という雄叫びを上げる日本の政策当局。その姿が世界の投資家の目に奇異に映ったとしても不思議ではありません。「日本と中国の経済統計は当てにならない」といわれるようになる前に、先進国としての品格を見せて貰いたいものです。
執筆:この記事は合同会社アナザーステージ 代表 近藤 駿介さんのブログ『近藤駿介 In My Opinion』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2014年06月02日時点のものです。

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